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『“水”赤字国、日本。ヴァーチャルウォーター(間接水)から見える世界』


 ビッグイシュー日本版73号の記事だ。


 東大生産技術研究所の沖大幹さんは、『蛇口をひねれば水はいくらでも出るし、公園に行けば子供たちの遊び場に大きな噴水があったりする(中略)それゆえ、水はまるであり余っているかのように思える』と、日本の水環境を語る。
 しかし、その「水資源が豊富なように見える」にはカラクリがあるという。
 いわく、『海外から食料を輸入することによって、日本はその分だけ水を使わないで済んでいるんです。その輸入したものを、もし日本で作ったとしたら、一体その水がどれぐらい必要になるんだろう? というのを推定したのがヴァーチャルウォーター』なのだそうだ。


 「バーチャルウォーター(間接水)」とは、初めて聞く単語だが、この考え方だと、ほとんど降雨量のない中東で水争いが起こらない理由も説明がつくのだという。すなわち、大量の水を必要とする農産物や家畜を日本同様に輸入に依存しているからだと。
 ちなみに、地球上の水の内、淡水は2.5%で、しかもその3分の2以上が氷河などで利用不可能。なので、人間が使用できる水は、全体の1%にも満たない。ただ、人間が使っている水も、その3分の2以上は農業と家畜生産用で、飲料水としては、そのまた0.1%未満だという。


 だから、『「のどが渇く」というイメージで語られがちな水不足の問題。しかしその本質は「飢餓」の恐れなのだと沖さんは語る』
 日本の農産物などに使われている水の年間総量は570億立方メートル。それに対して、輸入している農産物等に必要な水は640億立方メートル。日本の食糧自給率が40%なのだから、当たり前といえば当たり前の数字だ。
 また、バーチャルウォーターの考え方は、食物1キロを生産するのにどれだけの水が必要かということも計算する。
 『米を1キロ生産するのに最低1900リットルほどの水が必要とされる。しかし牛肉の場合、同じ1キロを生産するのに1万5000リットルもの水が必要』なのだそうだ(いずれも米国で生産した場合)。
 で、分かりやすく身近な食べ物を作るのに必要なバーチャルウォーター量が図解されている。
 月見そば一杯を生産するのに必要な水は約750リットル、讃岐うどん120リットル、そして牛丼は1890リットル…。


 これまで、200ccほどのおしっこを流すために、その40倍もの水を使っていることにためらいがあったが、牛丼一杯に2トンもの水が「含まれている」こと、しかもそれが300円程度で販売されていることの意味に想像力を働かせる必要があるのかと思う。


 ちなみに、沖先生の専門は、「水文学」。みずぶんがく? と思ったら、「すいもんがく」と読むそうだ。
 Wikipediaってすごいね。