通勤デモ:毎日新聞

 『金子徳好さん83歳』


 11月27日、毎日新聞朝刊の訃報だ。


 『(かねこ・とくよし=平和活動家、ミニコミ研究家、映画監督の金子修介さんの父)26日、心筋梗塞のため死去』と簡潔に伝えている。決して大きな扱いではない。
 しかし、同紙を含めて、読売、東京が訃報を掲載し、朝日も翌27日に掲載した。
 というのも、金子さんは、『ベトナム戦争中の1965年から8年間、「アメリカはベトナムから手を引け」など反戦ゼッケンをつけて勤務先に通う通勤デモを続けた』ことで知られる人物だからだ。


 15年以上前、金子さんの話を聞く機会があったが、「通勤デモ」を始めるときに、「反対してくれるだろう」との期待(?)をこめて妻に相談したところ、「どうぞ」と言ってその日のうちに妻がゼッケンを作ってしまい、引くに引けずゼッケンをつけて電車に乗ったという。「その恥ずかしかったこと…」と言っていたのが、とても印象深い。


 その後、完全に米軍が撤退するまで8年の歳月を必要とするとは思いもしなかっただろうが、金子さんと同じくゼッケンを付けることを恥ずかしいと思う自分が、「アメリカはイラクから手を引け」とのゼッケンを付けて通勤できるかを自問せざるをえない。


 それにしても、この訃報を唯一掲載しなかった”モノを言う新聞”産経新聞は、なにが言いたいんだろうか。