心痛む者同士:朝日新聞

『陛下「琵琶湖のブルーギル 心痛む」』


11月12日、朝日新聞の夕刊だ。


 天皇が、11日に滋賀県大津市で開かれた「全国豊かな海づくり大会びわ湖大会」に出席し、『外来魚ブルーギルが異常繁殖し、琵琶湖の漁獲量が大きく減ったことに触れ、「ブルーギルは50年近く前、私が米国より持ち帰り、水産庁の研究所に寄贈したものであり、当初、食用魚としての期待が大きく養殖が開始されましたが、今このような結果になったことに心を痛めています」』と挨拶したという。


 『宮内庁によると、天皇陛下は皇太子時代の1960年にアメリカを訪問した際、シカゴ市長からブルーギルを寄贈され、食用や釣りの対象になればと水産庁の研究所に寄贈した』そうで、その後に分与された滋賀県水産試験場からブルーギルが逃げ出し、繁殖したとされている。
 そのため、鮒寿司の原料となるニゴロブナや、琵琶湖特産のホンモロコが激減。それらを好んで食してきた滋賀県人は、「天皇が(その昔は、「皇太子が」と言っていた)、いらんことするから」と小声で愚痴ったもので、それこそ滋賀県では、小学生から100歳まで、誰もが知る「公然の秘密」だった。


 しかし、当の天皇が、『一般水域に入ったブルーギルが生態系を壊したことについて以前から残念に思って』いたというのだ。
 言葉によって、琵琶湖の生態系が戻るわけもないのだが、皇太子(現天皇)に悪態をついてきた元小学生としては、はからずも感動した。


 被害を受けたと思っている人にとっていちばんつらいことは、加害者が加害事実を認識していないことではないかと思う。
 その意味で、少なくとも「以前から残念に思って」いたのが事実なら、被害者のつらさの大半は解消されたと言ってよいと思う。
 そこから先は、英知を集約して、ブルーギルブラックバスを駆除するだけでない、「共生」の方法が生み出されることを願うばかりだ。


 さらに天皇は、『側近に「おいしい魚なので釣った人は持ち帰って食べてくれれば」などと話していた』そうなので、スポーツフィッシングが趣味だという御仁らも、お言葉通りに釣った魚はきちんと持ち帰っていただきたいものだ。