愛されて:東京新聞

『青色に染めました』


 5月10日、東京新聞の記事だ。


 『キリンビール(東京)がサッカー日本代表を応援するキャンペーンの広告で、浦和レッズファンで観客席が赤く染まった埼玉スタジアムの写真を、日本代表の”サムライブルー”のユニフォームで席が埋まっているようにレッズ側に無断で加工していたことが9日、分かった』というもので、東京新聞ほか全国紙4紙とも報道している。


 昨年のJリーグの事実上の決勝戦となった浦和対ガンバ大阪の試合の写真を加工したそうで、『レッズ側は「クラブカラーは掛け替えのないシンボル。サポーターの気持ちを軽視している」と抗議』し、キリンはお詫びして、今後は別の写真に差し替えるというが、たぶんその怒りの意味は伝わっていないだろう。
 新聞各紙に1面広告を出し(東京新聞のみ全5段だったが)、山手線などでも大きくキャペーンしているのだから、相当の人数が制作にたずさわったはずだ。
 にもかかわらず、誰ひとり「やばいっすよ。こんなことしたらレッズサポに殺されますよ」と警告しなかったことが、なによりの証拠だ(ほんの少しでもJリーグをかじっている人なら、必ずそう”忠告”しただろう)。


 ただ、同様の加工が、あちこちの広告で行われているのも事実。
 サッカーではないが、西武ライオンズのポスターは、その客席がライオンズのシンボルカラーである青で埋め尽くされているが、近づいて見れば、観客の服が青く塗られているのが一目瞭然だ。
 また、読売ジャイアンツは、山手線に掲出した中吊りポスターにおいて、スタンドの観客があたかもオレンジ色のパネルを掲げて「TOGETHER」の文字を浮き上がらせているかのように加工していた。


 「身内がやるのと、他人が改竄するのは意味がちがう」との反論もあろうが、身内による「裏切り」の方が罪深いとも言える。


 ところで、キリンはヤフーなどにバナー広告を出しており、そこには、「KIRIN loves Soccer」と書かれている。
 しかし、ここでいう「サッカー」とはなにか。
 その議論が同社や広告制作を請け負う電通内でなされない限り、こんな「ミス」は何度でも繰り返されることだろう。