ゴマメ:毎日新聞

『視覚障害の男性困惑』


 4月5日の毎日新聞。サブタイトルには、『女性専用車両利用できるのに 周知不足で誤解うけ』とある。


 首都圏では女性専用車両が定着しつつあるが、『女性専用と分からないまま車両に足を踏み入れ、冷たい言葉を投げつけられる視覚障害の男性たちもいる』という記事だ。
 たとえば、『全盲の男性は(中略)1年半ほど前、何気なく電車に乗ったところ、「女性しか乗れませんよ」と女性客に注意された。冷たい空気が車両に広がった』そうで、『恥ずかしくて逃げ出したくなったが、満員で身動きも取れない。電車の中でじっと耐えた』経験から、その後は、ガイドヘルパーを雇って外出するようになったという。
 『(女性専用車両は)痴漢対策が主な目的だが、交通弱者にも配慮して、障害者や女性に介助されている男性も乗車が可能』なのだそうだが、ぼく自身は、この記事を読むまでそんなルールがあるとは知らなかった。
 そのため、先の男性は、『「交通弱者も利用できることをもっと知らせてほしい」と訴えている』という。


 でも、どうなんだろう。
 たとえば、ぼくが女性専用車に乗っている女性で、障害者が女性専用車両に乗っていいことを知らなかった場合、視覚障害者の男性が乗って来たら、やはり「女性専用ですよ」とおせっかいなことを言うと思う。
 それは、禁煙車両でタバコを吸っている人を注意するのと同じとも言えるし、その人が恥をかかない方がいいという大きなお世話にもよる。


 だから、この男性が苦痛を感じたのは事実かもしれないが、注意した人には、「他の人は黙ってるけど、私は障害者をゴマメ(地方によって、「おミソ」とか「カラス」とか「梅干し」とか、そういう意味)にしたくないのよ」という意図があった可能性はないだろうか。
 なのに、「冷たい空気が車両に広がった」なんてブンガク的表現は、少なくとも報道する言葉としてはなじまない。


 そして、根源的なことを言えば、なぜに障害者は男性であっても女性専用車両に乗っていいのだろうか。
 障害者は痴漢しないとか、よしんばやっても許せ、みたいな偏見が鉄道会社側にはないのか?
 女性専用車両は、普通ラッシュ時のみに運行されるのだから、他の車両と同様に混雑していて、交通弱者にとっても快適な環境とは言えないと思うし。


 『全国の私鉄71社が加盟する日本民営鉄道協会は「障害者も乗れることを放送やステッカーで積極的には知らせておらず、確かに対応不足。今後、一般に周知するよう取り組みたい」と話す』そうだが、あくまでも障害者を「一般」と区分して、「ゴマメ」にしておきたいのね、とイヤミのひとつも言いたくなるコメントだ。