納得:毎日新聞
『ネットの実名報道』
4月2日、毎日新聞の「オフライン」という連載コラムだ。
記者による取材余話のようなもので、事件の当事者やその家族から『「記事を消してくれませんか」こんなメールや電話が時々ある』と書いている。
『インターネット上に名前が残っていると今後の就職などに差し支える』との理由からだと。
例えば、息子が父を殺したという記事が毎日新聞のサイトに掲載された時には、『当事者の身内だという女性から、名前や住所を消してほしいと電話で要望された。「残された家族が、まだ同じ家で生活しているのです」』ということがあったと書く。
また、『「新聞紙面ならいいが、ネットには出さないで」という声もよく聞く』という。
これらに対して、新聞が実名報道を原則としていることや、『当事者側の要望をすべて反映させていたら、報道そのものが成り立たない』と反論することは、ある程度は仕方のないことだろう。新聞は読者のためにこそあるのだから。
しかし、住所と名前をネット上から削除してほしいと電話をしてきた女性に対し、『記事が永久にサイト内に残るわけではないことを説明し、納得してもらった』というに至っては、どうなんだろうか。
おそらく、その女性は納得などしてはいない。
しかも、「永久にサイト内に残るわけではない」との説明には、「家族が殺人事件を起こしたのは事実なのだから、その関係者なら一定期間は我慢しなさいよ」との意識がないと言い切れるだろうか。
もしそうだとしたら、新聞が「読者のため」ではなく、「社会制裁」のためにあることになってしまう。
コラムはこう続く。
『納得してもらったが、当事者の家族を心配し涙声で話す彼女の心情を考えると、やるせない思いが残る』と。
やるせないのは、彼女であり、読者だよ。