いい記事も:朝日新聞

『スノボ3年ぶりだった』


 3月29日の朝日新聞だ。
 このタイトルを見ただけで、ピンと来る人は少なくないだろう。


 そう、昨年末、埼玉県であった事件。
 2歳の子供を自宅に一人おいてスノボに行き、火事でその男の子を亡くした母親が不起訴になったというニュースの続報で、『「頑張って働いていたから、1日くらい骨休めしたかった」。取り調べ室で、母親は泣き崩れた』という。


 『母親は3年ほど前、両親の反対を押し切り、同い年のとび職の男性と結婚した。しかし、男性は1年前から家を空けた』そうで、その後は子供を寝かせつけてから、居酒屋で午後10時から朝4時まで働いていた。
 『夜勤を選んだのは深夜の時給が高いのと「昼間子どもと一緒にいたかったから」。誰にも相談しなかった』とも。
 事件当時、2歳児を置いて出かけるなんて(理由のいかんを問わず)と思ったが、『母親が男児を自宅に残して夜通し働いていた半年間、男児はけがをしたこともなく、食事も用意されていた』というのだから、その延長線上に、スノボがあっても不思議はない。


 それにしても、事件の際は、「スノボ殺人」などと実名報道され、インターネット上では、「いくら少子化でも、こんなバカは子供を作るな」といった批判が吹き荒れた。
 にも関わらず、この記事では「母親」としか表記されていない。
 不起訴になったことで配慮をしたのだろうが、その前に、自分たちがどんな報道をしたのかを顧みるなら、名誉回復の意味で、実名を出してもいいんじゃないだろうか。
 せっかくの「いい記事」も、欺瞞に見えてしまう。