逆転:東京新聞

『筆洗』


 東京新聞、3月2日の一面コラムだ。


 『近ごろこんなに刺激的で、考えさせられた論争はない』との書き出しで、雑誌「論座4月号」(朝日新聞社)における、「『”丸山眞男”をひっぱたきたい 希望は、戦争。』への応答」を紹介している。
 『最初に同誌1月号に「丸山眞男をひっぱたきたい」という挑発的なタイトルで論文を寄せたのは、31歳のフリーター、赤木智弘さんだった』そうで、未婚、親元で同居、月収10万円の彼には、『「平和な社会の実現」の名の下に、経済成長の利益を享受してきた先行世代への不満があり』『「極めて単純な話、日本が軍国化し、戦争が起き、たくさんの人が死ねば、日本は流動化する。若者は、それを望んでいる」と言い切る』そうだ。


 で、タイトルとなっているのは、東京帝大卒で、後に東大教授になる政治学者、丸山眞男が2等兵として招集された際に、学歴のない1等兵にビンタをくらったという逸話に端を発していて、『戦争とは現状をひっくり返し、イジメられてきた私たちが丸山眞男の横っ面をひっぱたけるかもしれない、逆転のチャンスだ、という論法になる』という。
 そんなエピソードを知っているということは(そもそも31歳で丸山眞男を知っているというのは)、赤木さん自身が、低学歴ではないのかもしれない。
 しかし、なのに一介のフリーターでしかないのは、大企業や公務員などの労組(=左翼)が「利権」を手放さないため労働力が硬直化しているからだ、との怒りがあるようだ。


 この赤木さんの”妄想”に対して、佐高信森達也は厳しく批判しているようだが、『鶴見俊輔さんは、「民衆の底に隠された問題を提起している」と受け止め』吉本隆明も一定の理解を示しているという。


 最近、憲法9条を守ろうという集会の事前ミーティングに参加する機会があった。
 その場で語られていたのは、憲法「改悪」を押し付けてきている安倍政権にノーの声を届けなければならない、あるいは9条の重要性を若者に理解してもらいたい、といった意見が出ていた。
 が、いま問われているのは、上からの改憲ではなく、下からの刹那主義が世代を超えて広がりつつある点ではないのだろうか。


 「論座」という雑誌は、読んだことないが、いちど買ってみようと思う。