夢:東京新聞

『名物ファンの死』


 2月20日東京新聞のコラム「松瀬学のスポーツ時評」だ。


 ラグビーシーズンが間もなく終わるが、今年はとくに寂しいとして、『「やっさん」が亡くなったからである。無名のラグビーファンなのだが、関西ラグビー界の名物男だった。ダミ声の痛烈なヤジは的を射てユーモアがあった』と書く。


 京都在住の安田紘三郎さんが、63歳で亡くなったというのだが、わたしは彼のことをまったく知らない。聞いたこともなかった。
 1943年、ソウル生まれ。戦後に引き揚げて高校を中退。定職につかず、結婚せず、『生きがいがラグビーと祇園祭だった』という。死因が肝膿瘍というのも、酒飲みらしく、いい感じだ。
 で、そんな彼の「夢」というのが紹介されている。


 『そやな。夢はニュージーランドの田舎のラグビー場でチケットのもぎりをすることや』と言っていたのだという。


 いい夢だよね。
 たぶん世界で唯一日常生活にラグビーが染み込んでいるニュージーランドの、しかも田舎のラグビー場で、「もぎり」をしてることが夢なんて。実現不可能さも、ちょうどいい。
 サッカー界だったら、どんな感じかな。
 イングランドの田舎のサッカー場かな?
 あるいは、Jリーグ入りを目指す日本の田舎チームのスタジアムか。
 ぼくは、ベトナムサッカー場でもいいような気がするが。
 入場口の自動改札化を義務付けられているセリエAでは消え行く存在だけど、「もぎり」は。


 なんにしても、こんなかっこいい「夢」を語れるようになりたいものだ。