通底:毎日新聞
『石川さん通夜』
2月11日の毎日新聞。
リンナイのガス湯沸し器による死亡事故が相次いでいるという特集の一部をなしている、小さな記事。本文は、わずか11行だ。
『今月7日に遺体で見つかった横浜市鶴見区(中略)石川一男さんの通夜が10日夜、同市内の斎場で営まれた』というもので、リンナイの「犠牲者」の通夜があったことを伝えている。
が、問題(なのかどうか判別しかねるので、ここに提示するわけだが)は、この短い原稿に添えられた写真の構図だ。
おかしくないですか?
そう、だれにもカオがないのだ。首のあたりでバッサリ切られている。しかもキャプションは、『取材に応じる亡くなった石川一男さんの姉(中央右)』となっているが、当然ながら「姉」の顔は写っていない。
あまりにもヘンなので、毎日新聞社に尋ねてみた。
「これは、なにかの間違いじゃないですか?」と。
読者係の男性の回答は、「間違いではありません。取材対象者の了解が取れなかったので、こういう形になっています」とのこと。
わたしは、「そうですか。そういうことはよくあるんですか」と返事。すると、彼はこう言った。「やむなくこうしたのだと思いますが、わたしはこれなら掲載すべきじゃないと思いますけどね」。
その率直な物言いに感心しつつも、彼の声は社内でどのぐらい通るものなのかが気になった。
最近は、テレビにおいても、カオを出さず、音声も変えて、それでもって企業や学校などを批判する人(らしき映像)を映したシーンをよく見かける。
この「姉」がそうだとは言わないが、みんなが「カオなし」になれば、言いたい放題な社会になるだけではないのだろうか。
毎日新聞は、新年の特集において、インターネットでの匿名発言を強く批判していたと記憶しているが、「2ちゃんねる」などの匿名掲示板と通底する危うさが、ここにはないのだろうか。