知恵:ビッグイシュー

『路上から』


 ビッグイシュー日本版65号の小さなコラムだ。
 ビッグイシューは、ホームレスが街頭だけで販売する雑誌で、月2回発行されている(単価200円)。
 インターネットが身近になってから、雑誌をほとんど買わなくなったが、これだけは、だいたい毎号買っている。
 特に、「ホームレス人生相談」という、ホーム有りの人の悩みをホーム無しの人が回答するコーナーがかなり好きだ。
ビッグイシュー販売場所


 それはともかく。
 『ローマ市の「モデスタ・ヴァレンティ通り」。ここは、住所がないため傷病手当や失業手当などを受けられないホームレスのために、ローマ市が設けた「架空」の住民登録先です』という。
 『一方、大阪市は昨年末、「あいりん地域」のある住所に大量の住民登録があったので実態確認のうえ適正化を図ると発表し、職権での登録抹消を示唆しました』という。


 こういうニュースがあったこともまったく知らなかった。
 確かに、国保でも失業手当でも、住所がないと受給できないことは多い。選挙権も実質的にはない。
 これら、住所至上主義は、憲法が定める「最低限の文化的な生活の保障」に反するとの意見もある。
 で、「ある住所」というのは、釜ヶ崎支援機構というホームレス支援グループの住所で、ホームレスに住民登録先として住所を提供しているそうなのだが、そのことを大阪市が問題視しているのだとか。


 そもそもホームレス(正確には住所レス)では、就職活動さえままならないことは、ほんのちょっと知恵を働かせれば分かること。
 ビッグイシューのコラムは、『大阪市は「架空」を盾にホームレスをさらに無権利状態におとしめるのか、ローマ市のように自ら「架空」の登録先をつくるのでしょうか?』と問いかける。
 公園に住むホームレスを多額の税金を使って追い出す大阪市の役人が、ローマ市の役人から学ぶべきことは、「余計なことはしないが、ある知恵は働かせる」という人間本来の生き方ではないだろうか。