教訓:朝日新聞

『3割、震災後に出生・転入』


 1月17日、朝日新聞の記事だ。


 『阪神大震災の発生から、17日午前5時46分でまる12年。おもな被災地である兵庫県12市では、95年1月以降、全人口の約1割を超える約40万人の子どもが生まれた』として、『転入者も含めた統計では、神戸市では人口の約3割が「震災を知らない市民」となる』と伝えている。


 12年というのは、干支が一回りする年月(正確に言えば、60年だけど)だし、転入出する世帯が多い多摩地区では、計算上は、10数年で全市民が入れ替わっていることになる市もあるぐらいだから、3割というのは妥当な数字だろう。
 しかし、だからと言って、『震災の教訓をどうやって共有するかが、ますます大きな課題となっている』などと、結論付けられる問題なのだろうか。


 たしかに、地震を実体験した人が知らない人へ伝えることで、防災意識が高められることはあるだろうし、家族や友人を亡くした人の悲しみを、より多くの人と共有できれば、少しでも精神的に癒やされるという面もあるだろう。
 でも、同記事が『昨年末時点で県営復興住宅には8858世帯(約1万5700人)が住むが、65歳以上の高齢世帯が62.4%を占め、うち独り暮らしが40%に達している』と伝えるような状態を、教訓とすべきなのは、果たして被災した市民だけなのだろうか。


 記事には、兵庫県知事が、今年始めの祝賀会で、『「昨年の兵庫国体を一区切りに、震災からの復旧と復興を成し遂げた」とあいさつ』したともある。


 はたして、彼が得た「教訓」とは、なんだったのだろうか。