それぞれのソマリア:読売新聞

『米、内戦介入の意図なし』


 1月10日、読売新聞の記事だ。


 『米国は8日、米兵18人の死者を出した1993年のモガディシオの戦闘以来初めて、ソマリアに軍事攻撃を行ったが、攻撃対象は国際テロ組織「アル・カイーダ」幹部に限定され、内戦状態が依然続くソマリアに軍事介入する意図はない模様だ』と、ワシントンにいる坂元隆記者は伝えている。


 本当か? 93年に虐殺された米兵は、見せしめに市中を引きづり回された。その忌まわしい記憶を世界最大の軍事力を誇る軍隊が忘れ去ったとでも?
 じっさい、坂元記者は、『ブッシュ政権は長年、ソマリアをテロとの戦いの最前線とみなしてきたが、イラク戦争で軍事力の余裕がないこともあり、内戦に直接介入することを極力避けてきた』と、まがうことなき過去形で文章を続けている。


 よく分からんのだけど、他国の領土を軍事攻撃しておいて、「軍事介入する意図はない」なんて状況が、世の中にあり得るのだろうか(いやない=反語)。


 一方、毎日新聞の同日の国際面の大見出しはこうだ。
 『米国との聖戦続ける』
 記事は、『戦闘で左の足と腕に重傷を負い、8日に手術したばかりの法廷連合(現政権=きせ注)戦闘員、ヌル・ハッサンさん(19)は記者に「退院したら米国とエチオピアへの聖戦を続けたい。自分たちはカネのために戦っているのではなく、アラーの神の導きで戦っている」と痛みをこらえながら話した』と伝えている。
 はたして、19歳のハッサンさんは、軍事介入する気もない相手を敵として戦っているのだろうか。あたかも風車に向かって突撃するドン・キホーテのごとく?


 いずれの新聞にも立場があるのだろう。
 だから、簡潔に、各新聞の10日付け朝刊の国際面大見出しと、その記事を執筆した記者の居場所を示しておく。


 読売 「米、内戦介入の意図なし」(ワシントン)
 毎日 「米国との聖戦続ける」モガディシオ
 朝日 米原潜、ソマリアへ航行か」(ドバイ、ワシントン)
 産経 「米軍、アルカイーダ攻撃」(ワシントン)
 東京 「軍事介入に反発必至」(ロンドン)


 紙面評価は各読者がなすべき。だが、渦中のモガディシオに記者を送った毎日新聞社の決断を支持しないなら、ジャーナリズムへの信頼など捨て去っていい。そうは思わないかい?