黙るしかない:朝日新聞
『イラク初V』
7月30日、自民党が参院選で歴史的な敗北を喫した翌日の朝日新聞だ。
『東南アジア4カ国で共催されたサッカー・アジアカップ決勝が29日に行われ、イラクがサウジアラビアを1−0で破り、初優勝を遂げた』というもので、本当に素晴らしい快挙だといえるだろう。
だけど。
同紙の中小路記者のリポートは、その熱気を差し引いても、いかがなものか? と首をかしげざるを得ないものだ。
いわく。
『これほど危なげない守備は、あまり見たことがない』、『徹底的なカバーリングで、日本がやられたサウジアラビアを完全に封じた』とイラク守備陣の集中力をほめているのだが、そのがんばりの理由を、『命がとられるわけでもない少々の辛抱は、何でもないと言わんばかり』と想像力をたくましくしているのは、筆がすべったですまされるのだろうか。
さらには、『そして、後半28分。必殺のカウンターで得たCKから、ユーニスが頭で決めた』との形容は、「見事なカウンター」でいいのではないのか。
準決勝の日にバグダッドであった自爆テロで我が子を亡くした母親が、「この命は代表にささげた」と言ったそうだが、これを聞いて得点を決めたユーニスは、「勝たないわけにいかないだろう?」と言ったという。
そして、中小路記者は、『ユーニスの言葉の重さには、ただ黙るしかない』と締めくくる。
ならば、その言葉通りに、ちょっと黙っているべきではないか。少なくとも、慎重に言葉を選ぶべきではなかったろうか。