青い屁理屈:毎日新聞、読売新聞

『バージニア工科大銃乱射から1週間』


 毎日新聞、4月24日の夕刊で、サブタイトルは『犠牲者に黙とう 32の風船放つ』とある。


 『32人が犠牲となった銃乱射事件から1週間がたった米バージニア工科大学で23日、授業が再開された』が、それに先立って『午前9時45分過ぎから追悼式典が行われ、犠牲者32人と同数の白い風船が空に放たれた』という記事。


 これだけだったら、「ふーん」以上の思いを抱かなかっただろう(それが正直なところだ)。
 しかし、サブタイトルにもなっている32個の風船とはちがう方法で学生たちが追悼したとも記されており、それがとても気になった。


 『銃乱射後に自殺したチョ・スンヒ容疑者が最初に学生2人を射殺した学生寮前には、通報があった午前7時15分に数百人が集まり、犠牲者と同容疑者の計33人を象徴する同数の白い旗を持った学生の一団が、学内中央の「ドリル・フィールド」まで行進した』というのだ。
 さらに、同日の読売新聞朝刊は、毎日新聞と同様に事件から1週間後の学内をレポートしており、『キャンパスの広場には、犠牲者の名札を添えた石が半円状に置かれ、花や手紙が添えられている。石の数は計33個。チョ容疑者の分もある』と伝えている。


 犠牲者らを追悼する学生と、じっさいに被害にあった学生との間には、追悼に対する考え方が異なることは容易に想像がつくし、33の白旗や石を用意した学生に対しては、あるいは批判が寄せられているかもしれない。


 しかし、こうも想像する。
 2001年9月11日のニューヨークでの同時多発テロの「犠牲者」の総数に、実行犯のサウジアラビア人らの数が含まれていたとしたら、果たしてイラクへの武力攻撃やアフガニスタンへの空爆はあっただろうか。
 あるいは、まったくの冤罪として、グアンタナモの米軍基地に放り込まれたアラブ系の若者が存在しただろうか。もっと言えば、集団自衛権の「合憲化」を目指すという動きが現在の日本にあっただろうか。


 鬼畜のごとき犯人も同じ大学で学ぶ「仲間」だった。だから同じように追悼する。
 であれば、民間機を乗っ取り、世界経済の権化ともいえるワールドトレードセンターに突っ込んで行った若者も、同じ地球に暮らす「仲間」ではなかったのだろうか。


 青臭い論理(あるいは屁理屈)であることは承知の上で、その青臭さを忘れないために記しておきたい。