センセーショナル:朝日新聞

『給食費滞納 22億円』


 1月25日、朝日新聞の記事だが、このニュースは、朝日だけでなく、全紙が1面トップまたはそれに準じる扱いで報じている。


 どれも似たりよったりの内容だが、朝日新聞によると、『給食を実施している全国の国公立小中学校で、全児童生徒の約1%にあたる10万人近くが05年度に給食費を滞納し、滞納総額は22億円余りになることが24日、文部科学省による初の調査でわかった』という。
 しかも、滞納理由について学校側は、『保護者の姿勢を問題としたのが60%で、保護者の経済状況をあげたのは33.1%だった』としていることから、『調査は、深刻化している滞納への対策を検討するため昨年11月〜12月に実施』したとの理由がもっともらしく聞こえる。


 が、はたして本当に「深刻化している」のだろうか。


 というのも、記事によると、2005年度の滞納額(22億円)は、『総額4212億円余の給食費のうち0.5%』に当たるのだそうだ。


 自営業はもちろん、年商4000億円規模の商売などしたことがないのでよく分からないのだけど、売り掛けの0.5%を回収不能なものとして処理せざるを得ないというのは、はたして突出して大きな数字なのだろうか。
 たとえば、書店の売り上げに対する万引き被害額とか、家具店などがクレームを付けられて代金を踏み倒される率などと比べて。


 商売と給食費を同じ次元で語れないとの主張があるかもしれない(わたしには屁理屈に聞こえるが)。
 でも、1学年100人と仮定して、滞納者はその中の1人で、しかもその生徒は1年まるごとではなく、6カ月分を滞納している状況を、「深刻化している」と言ってよいのだろうか。
 平均給与所得が年々減少するなか、99%の親が給食費(子どもが3人いれば月額1万5000円にもなる)を納めているという”モラルの高さ”を報じない理由はなんだろう?
 メディアが、保護者のモラル低下を嘆いてみせることで、新教育基本法の正当性を補完する機能を果たしてはいないのだろうか。


 そして、『過去と比べて給食費の滞納が増えたか』という問いに対して、最多の39%が「変わらない」と答え、「やや減った」や「かなり減った」を加えると過半数の学校が、「最近になって増えたわけではない」と見ている事実を大見出しにした新聞がひとつもなかったことも、後世のために書き残しておきたい。
(増減の比較が、「過去と比べて」と、とっても大雑把であるところは突っ込まない)